強敵 01

「あ……。」
澤口英咲(えいさ)です。
あたしは今、思わず声を上げてしまったところで。
隣には、あたしの中学校来の友達の裕ちゃんこと加藤裕子がいる。
中高と同じ学校で、大学は別だったのだが、就職先で偶然にも再会した。
今日は久しぶりに休日が重なったから、二人でショッピングに街に来ていた。
「ん?どうかしたの?」
あたしが小さくあげてしまった声に、裕ちゃんは反応する。
「え……あ、いや。なんでもないよ、気にしないで。」
本当は何でもなくない。
……でも、裕ちゃんはあまり関係してないし、本人たちは隠してるつもりらしいから……。
そう、あたしが見たのは、職場の先輩・青山学武(まなぶ)さんと滝田定奈さん。
あたしの勘では学武さんと定奈さんは付き合っている。
本人たちは言ってないけど……これは勘。
二人でいるあたり、間違いないと思う。
そしてなんであたしがそれに関係あるかと言うと、ぶっちゃけ……仮にも学武さんに恋をしてしまった。
も、もちろん恋する前から二人の雰囲気は感じてた。
それでも好きになってしまった。
このことを知っているのは、もちろん自分だけ。
もう、あたし自身どうしていいかわからない。
二人きりで出かけていると知っただけで、この苦しさ。
半端じゃない。
「……英咲?」
隣から裕ちゃんの声がして、腕を引っ張られた。
そのお陰であたしは呼び戻される。
「あ、あぁ、何?」
目線は学武さん宛てのまんまで。
「さっきから何見てんの?私の話聞いてないでしょ?」
キャップのせいで少しだけ陰っている裕ちゃんの表情は穏やかで、まぶしいくらいの笑顔。
学武さんの隣に自分がいれば、と考えているような今のあたしとは、全然逆の表情。
「どれどれー。」
裕ちゃんがあたしの目線と同じ方向をみる。
でもお互いがお互いに気づいたら何かと面倒だと思い、裕ちゃんの肩を持って後ろを向かせる。
そして目の前のブーツを指差して言う。
「あ!このブーツ、裕ちゃんのお気に入りとデザイン似てなーい?!」
すると裕ちゃん、ぱぁぁと明るくなり目が輝く。
「やっぱりそう思うでしょ!?実はね、これ新作なのー!さっきはコレについて語ってたんだぁ♪これね……って、アレ?英咲?」
自分では裕ちゃんの話にちゃんと耳を傾けてるつもりだったが、実は傾けているだけで、馬耳東風状態だった。
また、いつの間にか目線は学武さんに戻っていたのだった。
……とっても幸せそうに笑い合っている二人。
あたしは心にヒビが入りながらも目が離せずにいた。